私たちが暮らす日本列島は、美しい自然に囲まれ四季折々の変化を楽しめる一方で、地震や洪水などの自然災害がたびたび発生しています。
時には、甚大な被害が生じる大規模災害にも見舞われてきました。
また、テレビなどでも近い将来大きな地震が来る可能性が高いことが報道されています。
世界の陸地のわずか0.28%の国土しかない日本で、なぜこんなに自然災害が発生するのでしょうか。
その理由は、日本列島が置かれている地理的な特徴にあります。
本記事では、日本で大規模災害が多い理由や、災害が起きやすい地域の特徴、災害に備えて取り組むべき対策について解説します。
大規模自然災害の定義
大規模自然災害の明確な定義はありませんが、一般的には次のような災害をさします。
「被害が広範囲で、復興までに長時間を要し、被災地内の努力だけでは解決不可能なほど生活機能、社会維持機能がマヒする自然災害」
なお、自然災害は災害対策基本法で次のように定義されています。
「暴風、竜巻、豪雨、豪雪、洪水、崖崩れ、土石流、高潮、地震、津波、噴火、地滑りその他の異常な自然現象」
また、大規模自然災害に類する言葉として、次の法令用語があります。
- 特定非常災害(大規模災復興法)
→著しく異常かつ激甚な非常災害をさす用語 - 特定大規模災害(大規模災復興法)
→特定非常災害であって、当該非常災害に関わる災害対策基本法第二十八条の二第一項に規定する緊急災害対策本部が設置された災害をさす用語 - 激甚災害(激甚災害法)
→国民経済に著しい影響を及ぼし、かつ、当該災害による地方財政の負担を緩和し、または被災者に対する特別の助成措置を行うことが特に必要と認められた災害をさす用語
出展:大規模災害からの復興に関する法律 – 大規模災害復興法
日本で大規模自然災害が多い理由
日本は、世界でも特に大規模災害が多く発生しています。
その理由は、日本列島が次の地理的な特徴をあわせ持っているためです。
- 海洋プレートと大陸プレートの境界に位置している
- 台風の通り道にある
- 山地や丘陵地が多い
海洋プレートと大陸プレートの境界に位置している
日本列島は、太平洋プレート、フィリピン海プレート、ユーラシアプレート、北米プレートという4つのプレートの境界(衝突部)に位置しています。
そのため、プレート運動の影響による地震や火山活動が活発になるのが特徴です。
マグニチュード6以上の地震はプレートの境界で発生することが多く、4つのプレートの境界に位置する日本では大地震が多く発生しています。
2000年から2009年の間に世界で発生したマグニチュード6.0以上の地震のうちの20.5%が日本での発生です。
また、プレートの境界ではマグマがたまる場所ができやすくなるため、日本列島には火山が多くあります。
世界の活火山の7%にあたる108山が日本に存在しています。
台風の通り道にある
夏になると、太平洋高気圧のヘリが日本にさしかかります。
太平洋上で発生した台風は、この高気圧のヘリに沿って進むため、日本列島に接近、上陸することが多くなります。
気象庁のデータによると、1年間に日本に接近上陸する台風の数の平均は、接近11.7回、上陸3回です。
台風は積乱雲が集まったもので、広い範囲で長時間にわたって雨を降らせ、河川の氾濫や土砂災害を引き起こします。
出典:台風の年平均 – 気象庁
山地や丘陵地が多い
日本は傾斜が急な地形が多く、国土の7割を山地と丘陵地が占めているのが特徴です。
急斜面や崖地が多くあり、そのうえ台風や地震が活発なことから、土石流や崖くずれ、地すべりといった土砂災害が発生しやすくなります。
また、急勾配な河川が多く、台風などの大雨で急激に水かさが増すため、洪水を引き起こしやすくなります。
出典:山が多く森林にめぐまれた国土 – 国土技術研究センター
過去10年の大規模自然災害の事例
日本では、毎年大規模災害が発生しています。
過去10年間で、激甚災害に指定された大規模自然災害だけでも47件にのぼります。
その中からいくつか事例として紹介します。
令和元年東日本台風
令和元年10月12日に伊豆半島に上陸し関東地方を通過した台風19号は、関東甲信越、東北地方を中心に広範囲に短時間で非常に激しい雨を降らせました。
この雨の影響により、長野県長野市では千曲川の堤防が決壊し広範囲にわたり浸水した他、各地でも河川の氾濫や土砂災害が相次ぎました。
また、停電が約52万戸、断水が約16.8万戸に及ぶなど、ライフラインにも大きな被害が出ています。
この台風による死者・行方不明者は108人となり、平成以降の台風では最悪の被害となりました。
熊本地震
熊本県熊本地方において、平成28年4月14日21時26分にマグニチュード6.5の地震が発生。
さらに4月16日1時25分にはマグニチュード7.3の地震が発生しました。
この地震による大規模な土砂崩れで阿蘇大橋が崩落したほか、約8300棟の家屋が全壊し、18万人を超える方々が避難を余儀なくされました。
また、停電が約48万戸、断水約45万戸、ガス供給停止が約11万戸におよび、道路や鉄道、空路も一時不通になるなどライフラインにも大きな被害が出ています。
この地震による死者は273人となっています。
出典:熊本県熊本地方を震源とする地震 第121報 – 消防庁
広島市の土砂災害
平成26年7月30日から8月26日にかけて、台風11号、12号および台風通過後の秋雨前線の停滞により、日本の広範囲で長期間にわたる豪雨が発生しました。
この豪雨により、8月20日に広島県広島市で大規模な土砂災害が発生し、土石流などで死者74人、家屋の全壊174戸の被害が出ています。
出典:平成26年8月20日に発生した広島市土砂災害の概要 – 内閣府
大規模自然災害が発生しやすい地域の特徴
前述したとおり、日本列島は地震や台風などの自然災害が多く、日本のどこにいても災害に巻き込まれる可能性があります。
特に、次のような特徴を持つ地域は、大規模な自然災害が発生するリスクが高くなります。
- 山沿いや斜面
→台風による豪雨や地震によって、土石流や地すべりが発生するリスクがあります。 - 海沿い
→地震による津波や高潮による床上浸水が発生するリスクがあります。 - 川沿い
→豪雨による河川の氾濫により、床上浸水が発生するリスクがあります。
地域の詳細な災害リスクや被害想定は、各自治体が作成し住民に配布しているハザードマップで確認できます。
自宅付近や避難経路上の危険度がわかるので、一度確認しておきましょう。
大規模自然災害に備えて対策すべきこと
大規模自然災害に備えて、各自で取り組んでおくべき主な対策を紹介します。
- 家具の固定
- 食料や飲料、生活必需品の備蓄
- 避難バッグの準備
- 避難場所や避難経路の確認
家具の固定
地震の揺れで家具が倒れて出入り口をふさいだり、家具のガラスが割れて散乱したりすることで、怪我をしたり逃げ遅れたりすることがあります。
震度5強以上の地震で、タンスなどの重い家具でも倒れることが想定されています。
いざという時にスムーズに逃げられるよう、テレビや本棚などの家具は倒れないようしっかりと固定しておきましょう。
家具を固定するには、次のような方法があります。
- L字金具やベルトで壁に固定する
- 天井との間に突っ張り棒を入れて固定する
- ストッパー器具で家具を壁側に傾斜させる
食料や飲料、生活必需品の備蓄
過去の大規模災害では、電気や水道、ガスといったライフラインも大きな被害を受けています。
電気や水道が止まった場合を想定し、普段から食料や飲料水、トイレットペーパーやおむつなどの生活必需品を備蓄しておくことが必要です。
特に大規模災害の場合は、1週間分の備蓄が望ましいとされています。
食料品の備蓄の方法は、缶詰やレトルト食品を多めに買って備蓄し、普段の食事で消費しながら買い足すローリングストック法がオススメです。
また、電気やガスが止まった際の熱源として、カセットコンロを用意しておきましょう。
カセットコンロがあれば、電気やガスがなくてもパスタやそうめん、レトルト食品などの調理ができます。
避難用バッグの準備
自宅が被災した場合は、避難所で生活を送ることになります。
すぐに避難所に避難できるよう、非常時に持ち出す物をあらかじめリュックサックに詰めて、いつでも持ち出せるようにしておきましょう。
印鑑や通帳といった貴重品、ばんそうこうなどの救急用品、食料品、飲料水、衣類、軍手、毛布、懐中電灯、電池、防災頭巾が必要になります。
また、赤ちゃんや小さいお子さんがいる家庭では、おむつや哺乳瓶、ミルク、レトルト離乳食も必要になります。
避難場所や避難経路の確認
避難場所や避難経路を事前に確認しておくことが重要です。
家族が別々の場所にいても合流できるよう、どこに避難するのかの避難場所を家族全員で話し合ってしておきましょう。
また、避難経路の確認も必要です。
普段通っている道は、土砂崩れや洪水などの災害リスクが高いかもしれません。
家や職場、スーパー、学校など、普段よく滞在する場所から避難場所へ行くには、どのように行動すれば安全なのか、ハザードマップをチェックしながら家族全員で検討しておきましょう。
まとめ
日本の大規模自然災害について解説してきました。
日本に住んでいる限り地震や台風などの自然災害から逃れることはできませんが、来たる災害に備えて準備をしておくことで、命を守れる可能性が高まります。
本記事でも紹介した対策を実施し、いざというときに自分や家族の命を守れるように日頃から備えておきましょう。
大規模自然災害の問題だけでなく、その他の社会問題について詳しく知りたい方は【最新版】日本が抱えている社会問題(社会課題)とは?の記事を是非読んでみてください。
これらの社会問題の解決に向けたヒントや取り組み、この記事で紹介されていない国内における問題などがあれば、当サイトの提案フォーラムに投稿してみてください。
最初は少数な提案意見でも、みんなの声が集まれば、大きな声として社会に届くかもしれません。