SDGsで掲げている17の目標のうちの1つにも挙げられている貧困の問題。
日本には縁がない、遠い国の出来事だと思われている人も多いのではないでしょうか?
貧困は私たち日本人にとっても、とても身近な問題で、日本の国民の7人に1人は貧困だと言われています。
この数字を聞くと驚きますよね。
そんな、日本の貧困の現状とその原因や私たちが出来る取り組みについて、わかりやすく解説します。
貧困の定義とは?
貧困とは、どういう状態のことを指すのでしょうか。
毎日食べるものにも困る状態のことでしょうか?
あるいは、食べるものは何とか確保できていても、生活が楽ではない状態のことでしょうか?
これはどちらも正解で、貧困には次の2種類の定義があります。
- 絶対的貧困
- 相対的貧困
絶対的貧困
絶対的貧困は、人間が生きていくため必要な衣食住が十分に手に入らない状態のことを指します。
毎日食べるものや住む場所に困っていて、放っておくと生命の維持も危ぶまれる状態です。
絶対的貧困をはかる指標は、世界銀行が定めた「1日1.9ドル以下で暮らす人」です。
相対的貧困
相対的貧困は、生活するのに十分な物資が確保できない状態のことをさします。一言でいうと生活が苦しい状態です。
貧困かどうかを分ける指標は、所得(手取り額)が国民の所得の中央値の半分を下回るかどうかです。このため、貧困かどうかを分ける貧困線は、住んでいる国や時代によって変化します。
日本の貧困の現状
日本では、相対的貧困の定義を使って貧困率を算出しています。
2019年に行われた最新の国民生活基礎調査の結果によると、貧困かどうかを分ける貧困線は127万円です。
そして、所得(手取り)が127万円に満たない相対的貧困率は15.7%でした。つまり、国民の6.3人に1人は貧困層であり、人口にすると日本国民のうち約1800万人が該当します。
また子供がいる現役世帯のうち、大人が1人の世帯の貧困率は48.3%でした。これは、シングルマザーやシングルファーザーの世帯の2人に1人が貧困だということを示しています。
このように、貧困は私たち日本人も直面している問題なのです。
ですが、なぜ貧困問題はあまり身近に感じられないのでしょうか?その理由は、日本の貧困層が外部からは見えにくいためです。
外部から見えにくい主な理由は、次のようなものです。
- 貧困層でもスマホやゲーム機を所有している世帯は多くあり、一見すると貧困には見えない
- 貧困層であることが恥ずかしいという気持ちから、生活が苦しいことを隠している
私たちの周りには、気づかれずに貧困に苦しんでいる人たちも、たくさんいるのです。
日本では所得格差による貧困が深刻
日本における貧困の大きな理由は所得格差です。
正規従業員と非正規従業員(アルバイトや派遣など)では、その所得に大きな差があります。
労働人口における非正規従業員の割合
日本では労働人口の37.2%にあたる2090万人が非正規従業員です。
労働人口の3分の1以上が非正規従業員であり、この非正規従業員の収入が低いことが、日本の貧困率に繋がっています。
非正規従業員の収入の実態
では、正規従業員と非正規従業員では、その収入にどのくらいの格差があるのでしょうか。
次の表は、年間収入が100万円未満の比率(%)です。
正規雇用 | 非正規雇用 | |
---|---|---|
男性 | 1.0 | 28.9 |
女性 | 3.6 | 42.6 |
この表を見て分かる通り、正規従業員と非正規従業員では大きな格差があります。
男性の場合は非正規雇用の約4人に1人、女性の場合は非正規雇用の約2人に1人が、年間収入100万円に満たないのです。
低所得者の貧困における今後の課題
低所得者の貧困における課題には、直近の課題と将来の課題の2つがあります。
直近の課題は、教育格差や医療格差と言われています。将来の課題は、貧困の負の連鎖です。
それぞれについて、詳しく説明します。
貧困における直近の課題:教育格差、医療格差
貧困層の子供たちは、低所得が原因で塾に行けなかったり大学に進学できなかったりします。
子供たちが、勉強の時間を削ってアルバイトして家計を助けているといったケースも少なくありません。そのため、貧困層の子どもたちは貧困ではない子どもたちと比べて教育を受ける機会が減ってしまいます。
医療についても、貧困層の人たちは医療費や薬代が払えず、十分な医療を受けられないことがあります。
このように、収入格差は教育格差や医療格差に発展してしまいます。
貧困における将来の課題:貧困の負の連鎖
教育格差の先には何があるでしょうか。
教育の機会を奪われた子どもたちの進学率が下がってしまい、卒業後は非正規の仕事に付く可能性が高くなってしまいます。
これらの背景により、貧困層の子どもたちは大人になっても貧困層から抜け出せない可能性が高いのです。
これが貧困の負の連鎖です。
日本の貧困状況を知った上で私たちでも取り組めること
日本の貧困状況に対して、私たちでもできる取り組みには、次のような活動があります。
- ボランティアへの参加
- 寄付
それぞれを説明します。
ボランティアへの参加
貧困を解決することを目指して活動している多くの団体や自治体が、ボランティアを募集してます。
ボランティア活動に参加して、現地で炊き出しなどをする中で、貧困層の人たちと直接ふれあうことができます。
貧困層の人たちにとっては、自分を助けてくれる人がいるという事実がとても心強く、生きる希望になります。
寄付
ボランティア活動への参加が難しい場合でも、寄付という形で支援ができます。また、寄付は金銭だけではなく、物資でもできます。
例えば次のような寄付を募っている自治体もあります。
- 卒業して着なくなった制服を次の世代の子どもたちに譲る
- お歳暮などでもらったけれど食べない食品を回収して、貧困層の人たちに譲る
お近くの自治体がこうした活動をしているか確認して寄付に参加することで、自分にとっては余剰だった物資を、それを必要としている人たちにまわすことができます。
まとめ
日本の貧困の現状や課題について解説してきました。
貧困が私たちにとっても身近な問題であることが分かって頂けたと思います。
日本の貧困問題を解決するには、私たち国民が日本の貧困問題を正しく認識することが第一歩です。
その上で、国民一人ひとりが自分の行動の範囲で、できる取り組みを少しずつやるだけで、貧困問題は解決に向かって大きく動くと思います。
「できることを、少しずつ」
これが、日本の貧困層を助けて貧困問題を解決に向かわせる合言葉です。
国内の貧困問題だけでなく、その他の社会問題について詳しく知りたい方は【最新版】日本が抱えている社会問題(社会課題)とは?の記事を是非読んでみてください。
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