日本は、世界でもトップレベルの少子高齢化社会となっており、労働力の不足や社会保障費負担の増加が大きな課題となっています。
日本が少子化となっている原因の一つが晩婚化・未婚化の進行です。
なぜ晩婚化・未婚化が進行しているのでしょうか。
本記事では、晩婚化・未婚化の現状や、晩婚化・未婚化が進んでいる理由、結婚に対する国の支援策を解説します。
国内の晩婚化・未婚化の現状
晩婚化とは、初婚年齢の平均が高くなっていく傾向のことをさします。
また、未婚化とは結婚したことがない独身者の割合が高くなっていくことです。
日本は晩婚化・未婚化の傾向にあり、それが少子化の原因の一つになっています。
晩婚化の現状
平均初婚年齢は、男女ともに年々高くなっています。
2019年の日本国内の男女別の平均初婚年齢は、男性が31.2歳、女性が29.6歳となっていて、1975年と比較すると、男性は4.1歳、女性は4.9歳も上昇しました。(図1)
このように、日本では長期的に見ると晩婚化が進行しているのです。
ですが、ここ数年はその進行が鈍化しており、2014年以降は男女とも平均初婚年齢が横ばいとなっています。
未婚化の現状
未婚者の割合も、長期的に見ると男女ともに上昇傾向にあります。(図2)
例えば35歳〜39歳の未婚率は1985年では男性が14.2%、女性が6.6%だったのに対し、2015年には男性が35%、女性が23.9%となっています。
2015年は、35歳〜39歳の男性の約3人に1人、女性の約4人に1人が未婚となっているのです。
晩婚化・未婚化が進んでいる理由
晩婚化・未婚化が進んでいる理由として、次の点が挙げられます。
女性の社会進出が進んだ
1986年に男女雇用機会均等法が施行されて以降、女性の社会進出が進んでいます。
男女雇用機会均等法とは、雇用における男女の格差を撤廃することを目的とした法律です。
この法律により職場における女性の待遇が改善したことを背景に、女性の就業率は飛躍的に上昇しました。(図3)
例えば25歳〜29歳の女性の就業率は、男女雇用機会均等法が施行された1986年には51.9%でしたが、2016年には78.2%になっています。
このように、女性が活躍できる社会に変化してきたことで、結婚して家庭に入るよりも、やりたい仕事に打ち込みたいと考える女性が増えてきました。
このことが、晩婚化・未婚化が進んでいる原因の一つとなっています。
結婚相手と出会えない
国立社会保障・人口問題研究所が実施した調査によると、交際している相手がいない未婚者の割合は年々増加しており、2015年には男性未婚者の約7割、女性未婚者の約6割が、異性の交際相手を持たないと回答しています。
同調査によると、未婚者が「結婚できない理由」として挙げた要因の中で最も多かったのが「適当な相手に巡り合わない」でした。
結婚は良い相手がいてこそです。
いずれは結婚したいと考えていても、良い交際相手に巡り合えずにいる人が多くなっていることが、晩婚化・未婚化の一因となっています。
出典:第15回出生動向基本調査 – 国立社会保障・人口問題研究所
結婚の必要性を感じない人が増えた
晩婚化・未婚化が進んだことで、独身の人が周囲に増えてきました。
前述したとおり、2015年では35歳〜39歳の男性の約3人に1人、女性の約4人に1人が未婚となっており、「結婚することが当たり前」とは言えない社会になっています。
周囲に独身の人が増えたことで、「自分も結婚を焦らなくて大丈夫」「必ずしも結婚する必要はない」と考える人が増えていることも、晩婚化・未婚化の要因になっていると考えられます。
結婚に経済的な不安がある
日本では労働人口の37.2%にあたる2090万人が非正規従業員です。
非正規雇用者の収入は少ない傾向にあり、男性の場合は非正規雇用の約4人に1人、女性の場合は非正規雇用の約2人に1人が、年間収入100万円に満たないという調査結果もあります。
収入が低い中で結婚して子どもができると、出産・育児にお金がかかり生活が成り立たなくなることを不安に感じ、結婚に踏み切れないでいる人も一定数存在しています。それが晩婚化・未婚化が進んでいる原因の一つとなっています。
晩婚化・未婚化によるメリット
晩婚化・未婚化は、少子化を加速させる原因の一つであり対策が必要な社会問題であると捉えられています。
ですが、晩婚や未婚には次のようなメリットもあります。
行動や生き方が自由
結婚すると家族のために使う時間が増える分、自分のために使える時間が減ってしまう傾向があります。
すると、独身の時と比べて趣味や娯楽を十分に楽しめなくなってしまいます。
また、友人と遊んだり食事に行ったりする機会も減ってしまいます。
未婚でいれば、誰にも気兼ねせずに自分の好きなことに時間を使えるため、趣味や娯楽をめいっぱい楽しんだり、友人との交友の機会を多く持てたりすると言ったメリットがあります。
金銭的に自由
結婚すると、金銭を使う自由も制限される傾向があります。
ある企業の調査では、結婚して小遣い制になったという男性の割合は45.2%となっており、夫の約2人に1人が小遣い制です。
小遣い制になると、自分の意思で自由に使える金銭が制限されてしまいます。
さらに、子どもができると、育児に使うお金が増える分自分の趣味や娯楽にまわせるお金はますます減ってしまいます。
反対に、独身でいれば趣味や娯楽のために自由にお金を使える点も、晩婚・未婚のメリットの一つです。
家族扶養の責任がない
結婚し扶養している家族ができると、家族を養っていかないといけないという責任が生まれます。
そのため、独身のときと比べて転職などにチャレンジしにくくなってしまいます。
転職して収入が下がってしまったら家族に苦労をかけるという思いから、安定している今の収入を維持したいという気持ちが強くなるためです。
未婚であれば、収入が下がっても自分にしか影響がないため、やりたい仕事を求めてさまざまなことにチャレンジできます。
晩婚化・未婚化に対する国の支援策
国や地方自治体は、少子化対策の一環として結婚を促進するための支援を行っています。
結婚新生活支援事業による経済支援
結婚新生活支援事業とは、これから夫婦として新生活をスタートさせようとする世帯を対象に、結婚に伴う新生活のスタートアップにかかる費用(家賃、引越費用等)を支援する事業です。
一定の条件を満たす世帯に対して、住居の住宅費や引っ越し費用を補助することで、経済的な不安から結婚に踏み切れないでいる人の後押しをすることを目的としています。
補助金額
- 夫婦ともに29歳以下の世帯: 1世帯あたり上限60円
- それ以外の世帯:1世帯あたり上限30万円
条件
- 令和4年1月1日から令和5年3月31日までに入籍した世帯
- ご夫婦の所得を合わせて400万円未満(世帯収入約540万円未満に相当)
- ご夫婦ともに婚姻日における年齢が39歳以下の世帯
- その他、お住いの市区町村が定める要件を満たす世帯
マッチング支援
良い結婚相手に巡り合えずに結婚できない人を支援するため、各都道府県が主導してさまざまなマッチング支援を行っています。
例えば次のような支援事業があります
岩手県:結婚支援事業「i-サポ」
“いきいき岩手” 結婚サポートセンター「i-サポ」の運営(会員制によるマッチング、婚活イベント情報の発信、フォーラム開催など)。
栃木県:とちぎ結婚支援センター「VERY MATCHING」
とちぎ結婚支援センターによる結婚支援(マッチングシステムによるパートナー探しや出会いの場イベントなど)。
新潟県:「あなたの婚活」応援プロジェクト
結婚を希望する方の婚活を応援するためのさまざまな出会いの場を提供。
徳島県:とくしまマリッジサポートセンター「マリッサとくしま」
1対1のお見合いや出逢いイベントの開催など。
まとめ
解説してきたとおり、未婚の人にとっては独身でいることに一定のメリットがあります。
ですが、晩婚化・未婚化の進行は少子化の原因となる社会問題であり、国として対策を実施しなければならない課題です。
国や自治体が実施しているマッチング支援や経済支援により、結婚できないでいる多くの人がよい相手に巡り合い、経済的な不安を乗り越えて結婚できるようになることを期待します。
晩婚化・未婚化の問題だけでなく、その他の社会問題について詳しく知りたい方は【最新版】日本が抱えている社会問題(社会課題)とは?の記事を是非読んでみてください。
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