SDGsでは、その17の目標の一つとして「ジェンダー平等を実現しよう」という目標を掲げています。
このジェンダー平等を実現するために避けて通れないのがLGBTの問題です。
世界はいま、LGBTの人々が自分らしく生きられる社会を目指しています。
本記事では、LGBTの定義や、LGBTの人々が抱える問題、LGBT問題への取り組みについて解説します。
LGBTの定義
LGBTとは、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの頭文字を取った言葉で、セクシャルマイノリティ(性的少数者)を表す総称の一つとして使われています。
セクシャルマイノリティとは、恋愛感情が同性に向く人や、自分の性に違和感を覚えるなどの人々のことです。
セクシャルマイノリティの代表的なタイプがLGBTの語源にもなっているレズ、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーで、それぞれは次のような人々のことをさします。
- レズ:女性に性的な欲望や恋愛感情(性愛感情)を抱く女性
- ゲイ:男性に性愛感情を抱く男性
- バイセクシャル:男女どちらにも性愛感情を抱く両性愛者
- トランスジェンダー:自身が認識する性別と体の性別が一致していない性別越境者
セクシャルマイノリティには、他にもクエスチョンと呼ばれている自分の性自認や性的指向がわからない、あるいは決められない、意図的に決めていない人々や、アセクシャルと呼ばれる男女どちらにも性的な魅力を感じない人々など、多様な人々がいます。
セクシャルマイノリティの多様性
LGBTの多様性を考慮した言葉として、最近ではLGBTQ+という言葉も使われるようになってきました。
Qは、クエスチョン(Question)の頭文字です。
+は、プラスαと同じ意味で、LGBTQ以外にも性のタイプが多様であることを示しています。
性を構成する要素には次の3つがあります。
性自認(心の性)
自分が自分の性別をどう捉えているかが、性自認です。
心の性や性同一性とも言います。
体の性
体がどんな見た目や特徴を持っているかが、体の性です。
性的指向
恋愛感情や性的な欲望がどの性別に向かっているかが、性的指向です。
性のタイプにはこれら3つの要素を組み合わせるだけでも次のようなパターンがあります。
LGBTの割合
LGBTの人口の割合は正確にはわかっていませんが、企業などが実施したいくつかの調査によると、日本人の約8〜10%がLGBTにあたるとされています。(表1)
これは、日本人の10人〜12.5人に一人がセクシャルマイノリティであるという計算になります。
調査機関 | 調査結果(LGBTの割合) | 調査方法 |
---|---|---|
博報堂DYグループ2016年度LGBT意識行動調査 | 8% | 全国の20〜59歳の個人、8万9366人に対するインターネット調査 |
連合LGBTに関する職場の意識調査(2016年) | 8% | 全国の20歳~59歳の有職男女1,000名に対するインターネット調査 |
電通ダイバーシティ・ラボ LGBT調査2018 | 8.9% | 全国の20~59歳の個人、6,229名に対するインターネット調査 |
LGBT総合研究所「LGBT意識行動調査2019」 | 10% | 20~69 歳の個人、428,036 名に対するインターネット調査 |
【出典】
▶博報堂DYグループのLGBT総合研究所が意識調査
▶LGBTに関する職場の意識調査(日本労働組合連合会)
▶電通ホームページのニュースリリース
▶LGBT総合研究所「LGBT意識行動調査2019」最新結果を速報
LGBTの人が抱える問題
LGBTの人々は、社会生活のさまざまな場面で問題に直面したり、精神的な苦痛を強いられたりすることが少なくありません。
例えば次のような問題に直面しています。
差別やいじめにあう
LGBTの人々は、差別やいじめにあうことが少なくありません。
- 学校でいじめられたり仲間はずれにされたりする
- 職場で陰口や誹謗中傷を受けたり、パワハラのきっかけになったりする
- 地域で差別を受けて孤立してしまう
- 差別やいじめにより、うつ病になったり自死に追い込まれたりする
就職がしづらい
LGBTの人々は、就職活動においても困難に直面します。
- 面接でLGBTであることを話したら面接を打ち切られた
- 性別限定の職種で採用されない
- 男女分けを前提としたリクルートスーツが着用できず、就職活動が困難になった
結婚ができない
日本では、法律上の性別が同じパートナーとは、結婚できません。
法律上の性別を変えることは認められていますが、性別適合手術が必要などハードルが高く、すべてのトランスジェンダーが性別の変更を申請できるわけではありません。
法的な結婚ができないと、実生活で困ることもあります。
- 法的な家族ではないため家族手当が受給できない
- パートナーが意識不明で入院した際に、病院から治療の内容の説明が受けられず、面会もできなかった
- 遺産の相続権がないため、パートナーと死別したら家を追い出された
性自認と戸籍上の性別が異なる
トランスジェンダーの人々は、戸籍上の性別が性自認(心の性別)と違うというだけでもアイデンティティを傷つけられ、つらい思いをします。
その上、実生活においても次のような影響があります。
- 学生寮が戸籍上の性別で分けられていたため入寮できなかった
- 制服や運動服が戸籍上の性別で分けられているため、苦痛を感じ不登校になった
自分らしく生きられない
ここまでで紹介してきたような問題から、LGBTであることを隠して生活している人もいます。
本当の自分を隠して生活することで、自分らしく振る舞うことができず、つらい思いを強いられます。
国内・国外におけるLGBTへの取り組み
国内・国外におけるLGBTへの取り組みを紹介します。
国内における取り組み
自治体の取り組み
いくつかの自治体では、同性パートナーシップ証明制度を導入し、同性カップルを承認して証明書を発行しています。
証明書があることで、病院で家族として扱ってもらえるなどの一定の権利が認められるようになります。
企業の取り組み
日本経済団体連合会(経団連)は、平成29年に多様な人材を受け入れて経済の活力とすることを目的に、女性、若者、高齢者、LGBT、外国人、障がい者などのあらゆる人材を組織に迎え入れる「ダイバーシティが求められている」という旨の指針を発表しました。
この指針では、各企業に対して次の取り組みを求めています。
- 性的指向・性的自認等に基づくハラスメントや差別の禁止を社内規定等に具体的に明記
- 社内の人事・福利厚生制度の改定
- 社内セミナー等の開催
- 社内相談窓口の設置
- ハード面での職場環境の整備
- 採用活動におけるLGBTへの配慮
- LGBTに配慮した商品・サービスの開発
- 社外イベントへの協力、NPO法人等との連携
出典:ダイバーシティ・インクルージョン社会の実現に向けて – 経団連
国外における取り組み
同性婚法の整備
同性婚法とは、同性同士のカップルによる結婚を認める法律です。
オランダ、カナダ、EUなど複数の国と地域で、同性婚法が制定されています。
差別禁止法
差別禁止法とは、性別や障がい、人種などを理由とした不当な差別や暴力を禁止する法律です。
差別禁止法に性的指向や性自認による差別を含み、LGBTが理由の差別を法的に禁止している国もあります。
トランスジェンダー関連法
トランスジェンダー関連法とは、トランスジェンダーの人々が自らの性自認を法律上で認定してほしいと望む場合に戸籍上の性別の変更ができることを定めた法律です。
複数の国や地域でトランスジェンダー関連法が制定されています。
まとめ
LGBTの定義や問題、取り組みについて解説してきました。
LGBTの人々は、少数派というだけで社会生活においてさまざまな問題に直面し、自死に追い込まれるケースもあります。
LGBTの人々が自分らしく生きられる社会を築くためには、LGBTではない人々がLGBTの存在を知り、その問題を理解することが重要です。
本記事がその一助になれば幸いです。
LGBTの問題だけでなく、その他の社会問題について詳しく知りたい方は【最新版】日本が抱えている社会問題(社会課題)とは?の記事を是非読んでみてください。
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